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第5回男女共同参画学協会連絡会に参加しました

第5回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム報告書
【日時・場所】2007年10月5日(金)名古屋大学

報告

 男女共同参画学協連絡会シンポジウムにて、神戸大学の取り組み(神戸スタイル)を報告しました。

「地域連携」をテーマとした分科会で報告しました。
朴木佳緒留 男女共同参画推進室 室長
 「神戸スタイル」の概要と、兵庫県や大学コンソーシアムひょうご神戸との連携(予定)を説明し、地域連携の充実により、女性研究者採用比率20%を達成しやすくなることを報告しました。他に、熊本大学からは県の男女共同参画センターとの共同、奈良女子大学からは地域共同の子育て支援、名古屋大学からは企業、行政、労働組合等と共同したフォーラムについて各々報告されました。議論では、男性の育児参画をどう進めるか、大学内の男女共同参画推進室の事情などについて意見交換し、人材の多様性確保、女性研究者増の必要性が再確認されました。大学も変わろうとしています。女性研究者増が研究のよりよい発展につながることを実感できる分科会でした。
全体報告
相馬芳枝 特別顧問
 男女共同参画学協会連絡会は、自然科学分野の男女共同参画を進めるために、5年前に発足し、応用物理学会、日本化学会等、約60の学協会が加盟しております。第5回男女共同参画学協会連絡会シンポジウムでは、200名を超える参加者があり、成功裡に終了しました。 午前中は3つの分科会、午後は全体会という構成で、内閣府からは、男女共同参画局・板東久美子局長が参加され、特別講演では、日本IBM技術顧問の内永ゆか子氏が、科学技術とダイバーシティーについて話されました。
ポスターセッション報告
男女共同参画推進室 川島弓枝
 第5回男女共同参画学協会連絡会シンポジウムにおいて、文部科学省 科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」採択機関として、ポスター報告をする機会を得ました。19年度7月の事業採択から駆け足で事業推進の基盤作りをし、事業内容の一部を運用できるまでになりました。それらをポスターとしてまとめ、外部の方からご意見を頂くことができ、これまでの事業実施内容を振り返ることができました。様々なご意見を頂きましたが、その1つが育成研究員についてです。「再チャレンジ!女性研究者支援神戸スタイル」事業では、出産、育児等により研究中断された方を対象に、「人材バンク」への登録者を募り、その中から「育成研究員」を選抜し、研究チームに配属、研究力の再活性化を図るという支援をしています。「育成研究員」は特に神戸大学出身者とは限定していない点がとても良いですねとのご意見を頂きました。これは、本学が、21年までに女性研究者の採用比率20%を達成しようという目標とともに、理系研究者全体の女性比率上昇へも貢献できる取組みとしてさらにアピールできるポイントであると再認識しました。また、科学技術振興調整費の他採択機関、特に1年の事業実施を終えられた機関の活動報告から、事業を進める上での問題点などを伺い、今後も意見交換を行えるような繋がりができたことは収穫でした。

他大学が取り組むポジティブアクションとは?

【分科会報告】分科会 A:「男女共同参画におけるポジティブアクション!?」
男女共同参画推進室 近藤佳里
1.「科学技術政策とポジティブ・アクションについて」塩満典子氏(お茶の水女子大学教授)
2.「ポジティブアクション北大方式、現状と展望」有賀早苗氏(北海道大学教授)
※北大方式 とは:20%/2020(2020年までに北大全研究者の女性比率を20%する)現状は11.2%(2760人中310人)
数を増やすことの重要性 、 孤立感の軽減、ロールモデルの提示が議論された。
【課題】
・男性への逆差別(女性の特別枠採用には女性も不快感を示す人がいる)
・大学における教育人事の特殊性(教員採用が少ないため女性を増やす=男性を減らすことになる)

女性教員の積極的採用・昇任のために<ポジティブアクション北大方式> - ポジティブアクション北大方式は、新たに女性教員を採用した場合、各部局が負担する人件費の4分の1を全学運用人件費より補填するシステムです。男性教員を採用した場合と比べて部局の人件費を節約することができ、節約分を部局員の増員や昇任、非常勤講師の任用に活用することができます。この方式は、平成18年度人事から適用が始まっています。
数値目標に向かってポジティブアクション(positive action, affirmative action)を行う場合、数だけを増やせばいいのか、男性への逆差別にならないか等、ポジティブアクションの正当性を問う議論・問題提起が必ずなされます。女性教員・女性研究者の数を増やすことの重要性は、女性の孤立感の軽減・身近なロールモデルの増加、教育・研究現場の雰囲気の刷新による意識改革促進など、多くの効果が期待されることから大きいといえます。北大の中期計画・中期目標にも明記されている「ポジティブアクション」を、男性にも女性にも納得の得られる方法で行いたい!その強い思いから、ポジティブアクション北大方式が提案されました。(人事ポイント制・・教授=1.0 准教授=0.796 講師=0.748 ・・・)また若手研究者カップル同居支援が好評である。
3.「名古屋大学における男女共同参画推進のためのポジティブ・アクション」束村 博子氏(名古屋大学 男女共同参画推進室長)※名大方式とは:総長宣言として「業績等が同等なら女性を採用します」と謳った。
4.「JST事業における男女共同参画」 島田純子氏(独立行政法人科学技術信仰機構 企画評価部男女共同参画担当)
5.「日本におけるポジティブアクションの可能性について」 都河明子氏(東京大学)
・Affermative action→Positive action ポジティブアクションはアメリカにおいて実施された。行政命令によりアファーマティブ・アクションが実施。白人男性雇用の優位を是正(黒人、エスパニックなどマイノリティへの配慮)後に男性優位の見直しになっていく。
参照文献:「女たちが変えるアメリカ」ホーン川島瑤子 岩波ブックサーチャー1988/家族の崩壊,保守化の波,エイズ流行――女は、そして男もまたモデルなき模索の中にいる.初婚者の半数が離婚し,そのうち七割が再婚,そしてその六割は再び離婚.ウィメンズリブの高揚から二○年,社会全体を大きく変えてきた女たちを,そしてゆれるアメリカ社会を,豊富なデータと鋭い現状分析をもとに,内側から報告する.
「アメリカと日本の女性研究者」 阿部悦子 (月刊  学 術 の 動 向 2000/6)
・フィンランドの施策(政府主導型)-男女均等オンブズマン職設置。均等法に(quarter)制を導入→トップダウンで進められている。
・スウェーデンの施策-ジェンダー、メインストリーミング(制限の少ない環境での教育)。
・ドイツの施策 - 数値目標 40%を掲げ、不履行の場合には制裁を設けている。
・イギリスの施策 - ポジティブ・アクションという施策は実施されていないが、マイノリティ、ジェンダーに対する制度によって行われている。
・マレーシアの問題 - マレー系と中国系の差(中国系が優位)。

・カンター理論 -「黄金の3割」・・・構成人数の30%を少数派が占めると意思決定に影響力を持つ。

・日本でポジティブ・アクションが困難な理由-ほぼ単一民族で、マイノリティがいない(女性はマイノリティではない),鎌倉時代からの封建制度の影響 ,鎖国をしていた。

・ポジティブ・アクションの必要性と効果
参考文献:「ポジティブ・アクション実践プログラム」(東京都作成)
1.6つの取り組み目標とその観点
2.ポジティブ・アクションの進め方
「ヴェールをとる科学―科学と女性性」L.J.シェパード
人類が月まで行ける科学技術の確立と、大震災やタンカー事故で思い知らされる科学技術の不在。科学のひずみがもたらす危機を乗り越えるために、心理学の成果を援用し、科学に女性性を統合する必要を説く。
【総評】
「大規模アンケートの自由記述を見て思うこと」 美宅 成樹コディネーター(日本生物物理学会。名古屋大学)
・遺伝子か社会か? -例えば貧乏な家庭に生まれた子供は、貧乏な大人になる確率が高い→「貧乏は遺伝か?」しかし、それは社会的問題であるのと同じように日本の女性研究者が少ないのは社会的問題である。
・逆差別化か、人材育成か? -女性研究者の数値目標は逆差別という記述があるが、人材育成という観点からまず立場を作る必要がある。→「立場が人を作る」
【質疑応答】
「女性に特別枠を作ることは逆差別になるのか?」
・能力の劣っている女性を採るのではなくて、同等なら女性を採る。
→背景は以前は同等であれば男性が選ばれていた。
→研究者の比 男性:女性=95:5、しかし実力は95:5ではない。
その対策として、男性(コミュニティ)にはどのようなメリットがあるのかを提示していく。
→男女が同等に活躍できる大学というイメージ。大学に優秀な女性とを呼び込むことができる。

*対策
女性研究者の基礎データーを知ってもらう。例えば、出産育児時期の女性研究者の状況を調べる。
・評価システムの問題→安心して競争できる状況
・男女共同参画の戦略
1.団塊の世代の退職によるたくさんのポストがあく。
2.振興調整費の問題点
3.競争的資金、評価、数値目標のバランスによっては男女共同参画にとって一面的に働くことがある。
4.高い数値目標がよいわけではない。

パネルディスカッション報告

板東久美子氏 「ワークライフバランス推進で多様な人材が生きる社会へ」
男女共同参画推進室 近藤佳里
・ダイバーシティとワークバランス -大学はどうして男女共同参画を進めるのか?→少子化現象のみでは説明不足
活力ある社会のためには多様な人材が必要→男女共同参画が問われる。
ダイバーシティの基本は男女のワークライフバランスが重要であり、男女の問題
Ex.松下電器(中村社長)アメリカの企業分析よりだめな企業の4つの要素の中に人材が均一というのが含まれる

・わが国の課題 -女性の能力は高いが社会的活躍はできにくい→日本はこの落差が大きい先進国
・ワークライフバランスの推進→柔軟な働き方、多様な働き方、官民調和の問題

・山脇良雄氏(文部省科学技術・学術政策基盤政策課長) -今後の課題 とは
効果の検証、支援の継続、成果の普及、実施機関の拡大、制度運用の改善 ではないか。

・島田純子氏(科学技術振興機構男女共同参画担当)「普通のM字型と女性研究者と何がちがうのか?」
出産・育児期―研究成果をもっともあげなければならない時期 。20代後半―普通は正規職に就いているが、研究者は任期つき非常勤、ポスドクである。

・内永ゆか子氏-・大学は至れり尽くせりだと思った。(民間と比べて)
本質はどこなのかを考える→大学としてどう競争力をあげていいのか? チャンスを生かしていくようにする。

全体の感想

板東久美子氏 「ワークライフバランス推進で多様な人材が生きる社会へ」
・初めてこのようなシンポジウムに参加しました。まず、参加している人たち(特に第一線の女性研究者)のパワーに驚かされました。「女性研究者支援モデル」事業については昨年から実施しているところが、今起動に乗り始めたような印象を受け、今年、採択されたところはまだまだ準備段階で神戸大学が遅れているのではないと思いました。実施における悩みはどの学校も共通のものがあり、それは私たちが男女共同参画推進室で語り合っていることとも共通しているようです。その中のひとつが、数値目標とその評価についてです。採択されるために掲げた数値目標と実施段階における矛盾、また評価を求めるあまり実態の意味が減少してしまう側面があるということです。科学振興機構への要求としては結果だけを見るのではなく、そのプロセスの評価をして欲しいという発言には同感でした。また、女性研究者支援という特別枠が逆差別ととられてしまうことに対する懸念です。男女平等な社会の仕組みとして確立しているのであれば、この支援は逆差別ということになると思いますが、社会そのものやその歴史の中で、差別されてきた女性研究者の字たちを考えると、これは逆差別ではなく是正であると考えるにいたりました。「同じ能力なら女性を」という名古屋大学のスローガンは今までの「同じに能力なら男性を」という社会通念があったことを考えると当然の要求だと思いました。そのほか自分自身の人生を振り返りいろいろなことを考えてしまいました。ポスター展は、前持った情報がなかったことと準備不足がとても残念でした。他大学のポスターは夫々工夫がされていて、非常の興味深いものがありました。(例えば東北大学のように女性研究者の歴史など背景的なことを盛り込む、神経科学学会のように専門分野の研究ガラスの天井と女性研究者の働き方の中で言われるガラスの天井と対比したような記事となっている)。来年参加するのであれば、きちんとコンセプトを決めてもう少し工夫を凝らし他ポスターを作り、できることなら賞をもらいたいと思いました。