学びの声

自分の好奇心を学問に、知識と人文学の価値を探る

文学部
地域歴史遺産保全活用演習

安下 尚吾

地域歴史遺産保全活用演習

文学部で学部生、大学院生に向けて開講されている講義です。
地域歴史遺産のうち、とくに古文書・絵図等の地域史料に直接触れ、その解読と整理方法について学びます。夏休み期間中に学内で古文書解読のための事前指導を受けた後、合宿形式で古文書の取り扱い方について実習を行います。


文学部で学ぶことの魅力について教えてください。

「文学部に通っている」と言うと、よく「文学部って何してるか分かんない」と言われてしまいます。

でもこれはある意味事実。個々にやっていることが全然違うという側面があり、それがすごく面白く、いい環境だなとも感じます。文学部1学年の人数は100人程度、そしてそれを15個の専修に分けることもあり、「学部内で完全に同じ時間割の人はいない」というほどまで自由な履修が可能です。(逆にこのせいで最初の方からどの授業を取ろうかと悩むことになるのですが……)

私は言語学専修所属でしたが、どの言語を対象とするか、どんな切り口で分析するか(音、文法、意味など)といった点は同じ専修で学ぶ学生の中でもバラバラで、さらに、それぞれが自分の興味に応じて別の専門の授業を取っていたりしました。そのため、同期と話していると自分が思ってもいなかった切り口から研究のアイデアが降ってくるということも珍しくありません。こういったところがすごく面白い!と私は感じます。


履修した授業のなかで印象に残ったものは?

私が受けた授業の中でも思い出深いものとして、「地域歴史遺産保全活用演習」があります。通称「古文書合宿」とも呼ばれるこの授業は、三木や篠山といった地域に実際に出向いて、合宿の形で古文書と向き合います。

授業の性質上、履修しているのは日本史専修の方が多いのですが、他の専修の学生でも受講可能なので、古文書に興味のあった私は幾度となくこの授業に参加しました。

普段行かない場所で、他専修の学生(といっても、そもそも少ないので同学年だと知り合いのことも多いですが)や先生方とわいわい話しながら実物の古文書に触れる経験はなかなか貴重なものです。平然と200年や300年前の文書が出てくることに最初はびっくりですし、別々の史料に関連性があることが見つかっていったりして、次第に当時の人々の生活が少しずつ明らかになっていくのは何とも言えない快感です。また、何といっても専門の院生方の知識量には圧倒されるばかりで、そういった意味でも好奇心を刺激されるいい機会でした。


これから神戸大学を受験する生徒たちにメッセージをお願いします。

さて、ここまで文学部の多様性について紹介してきましたが、今度は逆にそんな多様な環境の中で文学部生に共通するようなことは何かということについて考えてみます。

しばしば文学部での知識は「社会で役に立たなさそう」と揶揄されることがあります。まあ確かに、納得する部分もなくはないですが……。しかし私はこうも言い返したくなります。「文学部生が4年間で身に着ける素質は全然無駄じゃないぞ!」と。文学部では、人の残していった資料や、人々が今まさに生きているという営みに対して、じっくりと向き合います。その過程で、一つの答えを目指して、人や資料に向き合っていくこととなります。そこで身につく情報整理の能力、「きちんと悩める力」。こういったものは決して無駄ではないなと私は思います。また最終的には、自身の好奇心を中心に研究を進め、卒業論文という形にまとめ、ある意味世界に一石を投じることになります。これはすごく貴重な経験ですし、文学部に進んでよかったなと感じるところでもあります。何より、それまで気にも留めなかったことの裏に、数々の人々の歩んできた歴史や、系統だった規則性が見つかるというのはすごく楽しいです!! 

AI技術などの発展により、人間にしかできないことは何かということが課題視される昨今。人文学を通じて、楽しみながらわれわれ人間のできることは何か考えてみませんか?


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