広がる世界、それは現場で考えることから始まる

国際人間科学部
グローバル・スタディーズ・プログラム(GSP)
近田 佳乃
グローバル・スタディーズ・プログラム
学部生全員が国内外でのフィールド学修に参加する実践型教育プログラムです。
海外コースと国内コースの2つが設定されており、期間、内容、場所も多彩な個別プログラムの中から自らの学習計画に応じて選択できます。
GSPについて教えてください。
GSPは、国際人間科学部の学生全員が参加する実践型教育プログラムです。海外留学やインターンシップなど、100以上のプログラムの中から選んだフィールドでの体験を通して、世界の課題を学び、考えることができるのが特徴です。
渡航にあたって、学部に併設されたGSPオフィスによる充実した支援を受けることができます。フィールド学修後は、自らの経験を学術的な視点から深掘りし、最終レポートを執筆します。こうした丁寧な振り返りがフィールドでの経験に磨きをかけ、卒業研究やその後の問題関心に繋がっていきます。
参加したプログラムについて教えてください。
私が選んだGSコースは留学型です。学部協定校であるイギリスのマンチェスター大学に、9ヶ月間交換留学をしました。留学型では、半年から1年にわたって協定校に滞在し、専門知識を学びます。同時に、GSP事前学修で他の学生とディスカッションをしながら、留学先の社会課題への理解を深め、フィールド学修の計画を立てます。
こうした取り組みにより、自主的に動く準備ができた状態で渡航し、常に周辺の社会問題を意識しながら留学生活を送ることができます。

参加プログラムを選んだ決め手は何ですか?
長期留学は高校生の時からの憧れで、その夢を実現すべく、英語の勉強に多くの時間を費やしてきました。神戸大学に入ってからは、留学経験を活かして活躍する先輩の姿を見て、長期留学に行きたいという思いが一層強まりました。
フランス語を大学で履修していたこともあり、当初は英語圏、仏語圏の大学を候補としていましたが、慎重に検討した結果、最終的に英語圏でレベルの高い学術研究に触れたいと考え、文化人類学の分野で世界を牽引するマンチェスター大学を選びました。マンチェスターは多様性の街として有名で、そういった場で生活することにも魅力を感じました。
プログラムに参加してどんな力が身につきましたか。
プログラムに参加して得られた力は数えきれないほどあり、一言で述べるのは難しいくらいです。
例えば、大量の英語の論文を読み込んで批判的に分析する力、自分なりの考えをしっかり深めて意見を提示する力などが挙げられます。また、国際人間科学部でもフィールドワーク基礎論を履修しましたが、現地でもフィールドワークの授業も履修すると共に、インタビューや参与観察、記録の取り方についても実地で学ぶことができました。
さらに授業外では、留学生サークルで日本文化を発信するイベントを企画する機会がありました。世界各地から集まった留学生の実行委員メンバーと話し合うことを通して、日本を相対的に捉える視点を得ることができました。様々な社会的・文化的背景を考慮しながらコミュニケーションを取る力も以前より身についたのではないかと感じています。

プログラムの中で一番苦労したことは?
私は、現地の学生と同様に学術的な議論に積極的に参加することを一つの目標としていました。
授業では毎日大量の英語文献を読みこなし、それについて独自の考察を加えて議論を展開することが求められました。開発や移民問題、民族誌映画の分析をはじめ、いずれも専門性が高い授業だったので、準備にかかる時間や労力も膨大なものとなりました。ただ、質問や相談に快く応じてくれる先生方のおかげで試行錯誤を積み重ねつつ、乗り切ることができました。一生懸命書いた分、エッセイ課題に対して非常に丁寧なフィードバックをいただきました。それにより自分の文章の強みや弱みを把握でき、その後の論文執筆に活かすことができています。

このプログラムを履修して一番影響を受けたと感じることは?
留学の醍醐味は、偶然の出来事や出会いから、当初は考えもつかなかった学びが得られることにあると思います。
留学先でモスクに足を運ぶ機会があり、私はそこで同世代のムスリム女性達と運命的な出会いを果たしました。私の場合、彼女達との出会いから現場で考えることの大切さを学び、最も影響を受けたと感じています。エジプトやパキスタンで生まれ育った彼女達と食を共にし、故郷の生活や将来の夢を語り合ううちに、彼女達がヴェールの着用を理想の自己像や女性の権利に結びつけて重要視しているということが浮き彫りになってきました。私は西洋社会で政治的な議論が巻き起こっているヴェールについて、もっと彼女達の視点から考えてみたいと思い立ちました。それから私は約1ヶ月間を彼女達と過ごし、インタビューを行いました。
帰国後は彼女達の言葉を社会的・政治的文脈に位置付けながら、それらが示唆するヴェール実践の豊かな意味を探究し、その成果を卒業論文として発表しました。

この学びを今後どのように生かしたいと考えていますか?
今後はマンチェスターで出会った女性達をさらに深く理解したいという思いから、イスラームと共に生きる人々の生活について研究するために国際文化学研究科に進学しました。専門分野は、現場から考えることにこだわる文化人類学です。留学で培った英語運用能力を活かして、学生のうちから海外での研究発表に挑戦したいです。将来は文化人類学者として、より開かれた豊かな社会を実現するために知恵を紡いでゆく担い手になれるよう、精進していきたいです。
これから神戸大学を受験する生徒たちにメッセージをお願いします。
GSPを経験した私から言えることは、必ず自分の糧になる経験ができるということ。GSPを通した留学は、異文化体験や語学能力の向上に留まらず、現地で出会った人々の繋がりから世界を捉える視野を広げ、人間的に成長できる千載一遇のチャンスです。
国際人間科学部では、既にプログラムに参加した先輩やノウハウを熟知したGSPオフィス、そして留学を後押ししてくれる先生方など、学部全体が一丸となって皆さんを応援してくれます。ぜひ一歩を踏み出してこのチャンスを掴んで欲しいです。
