近年、EU(欧州連合)を取り巻く国際環境には大きな変動があった。一つに、地中海の対岸での「アラブの春」とその余波での大量の難民の押し寄せである。ソーシャルメディア(SNS)を用いた社会動員を背景に突き進んだ「アラブの春」を受けて、EUとしての移民政策や域内移動の自由についての見直しが迫られ、またノルウェーやフランスではイスラム原理主義者による深刻なテロ事件も起こった。もう一つはユーロ危機と欧州信用不安であり、これによりイタリア、スペイン、ギリシャ、さらにフランスでも政権交代が起こった。こうしたEU内外の大きな変動を受け、注目されるのがEU各国はこれまで通りEU自体を重視するのか、それともむしろナショナルな枠組みに閉じこもるのかということである。そして、こうしたプロセスのなかで、EU市民のアイデンティティにはどのような変化が生じているのか。
そこで本ワークショップでは、(1) 「アラブの春」がEU市民のアイデンティティや政治意識にどのような変化をもたらしたか、(2) EUのあり方をめぐる議論やEU内でのアイデンティティの変容や社会動員においてもソーシャルメディアの重みが増しているのではないか、(3) こうしたEUにおけるアイデンティティの変化がEUの対外関係(特に地中海関係、さらには日本との関係)にどのような影響を与えているかに注目し、EUの変動について考察する。
休憩 15:20 - 15:40
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