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地域連携活動発表会

<ESDボランティアプログラム推進のための組織化支援事業>
発表者:人間発達環境学研究科・教授 松岡 広路

「ESDボランティア塾ぼらばん」事業について、その目的、具体的方法、課題を、とりわけ地域連携との絡みで中間報告する。

「ESD」とは、「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development)の頭文字である。国連では、2005年~2014年まで、ESDへの取り組みと国際協力を、積極的に推進するよう各国政府に働きかけている。

現在、神戸大学でも、このESDに積極的に取り組んでいるが、知識や断片的な情報というものをただ頭の中で理解するような伝統的な教育スタイルではなく、具体的なアクションに参加しながら学習・成長を促すプログラムが、複数学部の連携の中で構想されている。この「ESDボランティア塾ぼらばん」は、そうしたESD推進の一環として、若い人たちが個や集団として成長していくと同時に、多領域の市民活動の連携による社会変動の可能性への信頼を高めていくことを目的とするボランティア活動プログラムのモデル事業である。阪神間のNPO、大学や学校関係者、教育委員会の人たち、そして本学の院生や学生と一緒に事業展開をしている。

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具体的には、「さぁ、ほんまもん(本物)を見つけに行こう」というキャッチタイトルで高校生や大学生が現場の人や問題に直接触れられるプログラムを心がけてきた。多様な領域を体験できる包括的な「選択的活動プログラム」と、その活動参加のなかで課題の総合性と自身の当事者性を実感するための「ふりかえりプログラム」を特徴とする。夏のプログラムから始まり、10月、1月、3月の計4回、メインプログラムがあり、このなかで、多様な活動への参加の構えやふりかえりを行う。

たとえば、夏のメインプログラム、岡山県のハンセン病療養施設「邑久光明園」でのボランティア・交流活動では、高校生、大学生及びスタッフが「群れ」としてのまとまりをもつだけではなく、問題への当事者性が高まったり、ボランティア活動やコーディネート能力の重要性を意識するようになったりしたようである。

また、選択的活動プログラムで協力を仰ぐNPOも、総合系NPO、子育て支援系、国際協力・多文化共生系、環境学習系、高齢者・障害者支援系、女性自立支援系、包括支援系と多様である。この事業は「実習」とは異なり、学生が関心のある所で活動出来るように、NPOの人たちにコーディネートして頂き、「本気になって格闘している人たちが地域にはいっぱいいるんだな」ということを学生たちが身をもって実感しつつ、ESDに資する総合的な課題発見能力・解決能力、活動への主体性が身につくことをねらいとする。

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本事業の将来性について言及すると、地域主体の「ESDのための学習支援プラットフォーム」、つまり、地域が作っていく新しいタイプの新しい学校が、阪神間に一つぐらいあってもいいのではないだろうかと考えている。地域の人たちの研究・教育能力が高まるというプロセスを大学が支援するということも求められる。スタッフや大学生、高校生から湧いてくるアイディアを活かして、別の学習プログラムやボランティア活動を作っていき、将来的には、大学と市民活動団体、企業が連携して学習支援プラットフォームを運営するという、新しいタイプのNPOが誕生したらと考えている。

課題は、各団体のリーダー間の連絡調整、各団体のスタッフ間の交流や連携しながらの事業展開の問題、NPOと大学の事業展開の期間設定など、様々なところで生じている葛藤をいかに処理するかである。相互理解を深めようと、合宿形式の事業を行ったり、交流会やセミナーを実施したりしているが、ようやく一年目が終わろうとするなか、こうした課題を克服しつつ、今後も地域の人たちや院生・学生とともに事業を突き進めていく覚悟である。これまでのような大学や関係組織の有形無形の援助を期待している。

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