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地域連携活動発表会

<アートマネジメントによる都市文化創生
-神戸国際芸術祭における産官学民連携を中心に->
発表者:国際文化学研究科・教授 藤野 一夫

異文化研究交流センターは2006年の春に発足した。異文化研究として国際交流、様々な国の文化の比較研究、そして地域連携という3本の柱を持っている。そして、今日のテーマは、「アートマネジメントによる都市文化創生」というテーマになっており、サブタイトルが「神戸国際芸術祭における産官学民連携を中心に」となっている。今日の話は産官学民で連携のその仕組み、その実態について話したいと思う。

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アートマネジメントとは何かということから説明する。まず芸術を観客に紹介する、2番目はアーティストがコミュニティの中で活動出来るような様々な経済的、法的、制度的な条件を整える。3番目は芸術によって社会の潜在的な能力の向上を支援していくということである。一言で言うと「アートをメディアとして新しい公共性、公共圏を育てていく」ということになる。

新しい市民社会作りのためのアートマネジメントということでは、行政管理からも、市場経済原理からも自立した新しい公共を、アートによって開くことは可能であるかという難しいテーマに究極的になると考えている。アートにおいて、行政管理や市場経済原理といったものから相対的に独立する、自立する可能性はどこにあるのかということを探っているともいえる。

具体的には、2006年「ウィーンの情熱」というタイトルの神戸国際芸術祭を産官学民連携で始めた。これは行政からの丸投げではなく、私ども教員と学生が今までやってきたものを更に積み上げる形で行ったものである。同時に神戸市が震災復興の中で、芸術文化の力で神戸市を元気にしよう、という趣旨で、3年前に文化創生都市を宣言した。しかし現在文化に資金を使う余裕がないので、産官学民の連携がいっそう必要となった。

2007年秋に約2ヵ月、第1回目のビエンナーレを開き、その当初10日程に神戸国際芸術祭(アートミックスKOBE)も開催した。神戸国際芸術祭は文化創生都市、神戸を実現するということを目指して行ったものである。「ウィーンの情熱」も学生とやってきた学内外での神戸大コミュニティーコンサートが一つの基礎になっており、それを更に発展させる形で今年の神戸国際芸術祭をおこなった。ビエンナーレの期間中、ミニコンサートを市内各所で開催し、総集編として「KOBE100人の運命」を松方ホールで開いた。ベートーヴェンの「運命」を5分位に短縮して、川柳のような日本語の歌詞を公募した。震災の記憶や人生の苦しみや喜びを詩に託すものが、200件位全国から集まり、その中から優秀作を選んで演奏する実験的なコンクールも行った。

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継続して実施している神戸大コミュニティーコンサートについても報告する。神戸大アートマネジメント研究会で2001年より過去7回、2006年は異文化研究交流センターの事業として開催してきた。趣旨は質の高い音楽演奏等によって神戸大と地域社会を結び、異文化交流の場を作るということと、もう一つは学生のアートマネジメントの実践の機会にしようということ。そのアンケート分析の結果、学外で行った場合、確かに地域の住民の皆様が沢山来て下さって、観客満足度も非常に高いが、学生がなかなか行きにくい。大学からちょっと離れているだけでも学生がなかなか来ないという難点を感じた。それから、学生スタッフがそこに参加することで、アートマネジメントのスキルアップに繋がることを意図しているが、どうもここ数年の傾向としてそういう面倒くさい作業を一緒にやってくれる人が減ってきているような懸念がある。そのため、どうやって学生をこういった実践の活動に巻き込んで、学生のアートマネジメントのスキルアップに繋げていくかということが私ども教員と研究員の大きな課題として残っている。

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