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地域連携活動発表会

<地域住民の後発医薬品・保険薬局利用支援と現役薬剤師の職能向上支援事業>
発表者:医学部附属病院・副薬剤部長 角山 香織

近年、後発医薬品活用による医療費削減が勧められており、そのために患者にも後発医薬品の正しい理解が求められている。また、高齢者人口の増加により慢性疾患を併発する患者が増え、一人の患者が、複数の薬局から複数の薬をもらっている例が増えてきている。併用薬剤による相互作用、副作用を避けるため、薬物療法を一つの薬局で一元的に管理する「かかりつけ薬局」の重要性について市民に理解を求めていく必要がある。一方、薬剤師には、薬物療法の高度化に伴って専門的な知識が求められている。
そこで本事業では、市民を対象とした公開講座(市民講座)の開催と薬剤師を対象とした公開講座を開催することとした。

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市民講座は、11月24日に神戸市生涯学習支援センターと連携して開催した。広報は薬剤部のお薬渡し口や神戸市生涯学習支援センターの講演会等で案内状を配布し、神戸新聞、朝日新聞の紙面で紹介してもらった。市民講座は1部:講演会と2部:お薬相談会の2部構成とした。高齢者を中心に、男女ほぼ同数の57人の参加があった。2部のお薬相談会では、アドバイザーとして薬剤師6人が参加したが、どの薬剤師にも列が出来、大盛況であった。写真撮影担当者も急遽アドバイザー役になったためにお薬相談の様子を記録することができず残念であった。市民講座後のアンケートによると、次の講演会のテーマとしては、副作用、健康食品、セルフメディケーション(自己治療)などを希望していることが分かった。また、お薬相談会では、薬の副作用に関する相談が最も多かった。お薬相談会を通じて、薬について気軽に相談出来る薬局薬剤師との関係作りが必要であり、かかりつけ薬局の重要性を理解してもらう必要性を改めて感じた。

薬剤師を対象とした公開講座は、まず、現職薬剤師のニーズをアンケートで調べそれに基づきテーマを決め7回にわたって開催した。公開講座の周知は兵庫県病院薬剤師会の協力で会員へメールで配信した。同時に、認定薬剤師の申請に必要な単位として認めて貰った。アンケートの結果は、疾患と薬物(中でもがん領域)、また病院と薬局の連携の関心が高く、公開講座のテーマに採用した。

第1回は薬薬連携をテーマとした。保険薬局薬剤師との意見交換会を通して、かかりつけ薬局を持つには保険薬局薬剤師と診療科医師のスムーズな意思疎通が重要であり、病院薬剤部が橋渡し役になることで意思疎通が適切にはかれるのではないかということが分かった。第1回の経験を踏まえ、第2回は診療科の医師による講演と意見交換会を実施する。今後、各診療科の医師による治療方針や適応外使用についての講義の実施や、保険薬局薬剤師からは患者の薬物療法上の問題点についてフィードバックできるようなシステムが必要であると考えられる。

がん領域の公開講座では、がん対策基本法の施行により患者の緩和ケアに関する専門的な知識や技能を身につける重要性が求められているため、患者の心のケアを考える精神腫瘍学、在宅緩和医療を各テーマとして2回講義を行った。その他、大学病院の特長を活かし、がん患者の栄養管理(NST:Nutrition Support Team)に積極的に関与している医師の話や、医薬品評価に必要な臨床統計学の講義などを取り入れた。開催時間は平日の夜、講義会場も若干アクセスの悪い神大病院内という条件にもかかわらず、講義には平均20人程度の院外薬剤師の参加があった。また、島根県の薬剤師からも参加可能か?との問い合わせがあり、このような勉強会のニーズの高さがうかがえた。

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今後の取り組みとして、1.市民への後発医薬品・かかりつけ薬局利用の普及を目的とした定期的な市民講座の開催2.現職薬剤師の職能向上を目的とした意見交換会の開催(薬局薬剤師と診療科医師が、患者の薬物療法上の問題点や治療方針を共有出来るような場)3.薬剤師のニーズに合ったテーマでの公開講座、などを継続して開催していく予定である。

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