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地域連携活動発表会

<ヒューマン・コミュニティ創成研究センターにおけるアクションリサーチの現状と課題>
発表者:人間発達環境学研究科・教授 松岡 広路

「ヒューマン・コミュニティ創成研究センターにおけるアクションリサーチの現状と課題」と題し人間発達環境学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センター(以下HCセンター)の概要と課題について報告する。

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センターでは、子ども・家庭支援部門、障害共生支援部門、ジェンダー研究・学習支援部門、ヘルス・プロモーション部門、ボランティア社会・学習支援部門、労働・成人教育支援部門の6つの基幹部門を持っている。6部門の先生を中心として、プロジェクトをいくつか作り上げている。また、実践者の支援、プログラムの開発方法、人的なネットワークの構築などにフォーカスしながら全体の活動調整・推進を行っている。特徴として、発達支援論コースという教育課程を持ち、教育と研究を一体化させている。また、HCセンターは現代GP或いは大学院GP推進の原動力であり、ESDの国連の提案するプログラムで認証されているがその事務所もこのHCセンターにおかれている。

HCセンターについての一つのキーワードとしてアクションリサーチというものがあり、各部門で様々な事業を展開している。サテライト施設「のびやかスペースあーち」における地域の子育て中の母親や、障害児たちへの様々な活動、インクルージョン(障害を抱える人と一緒に生活できる仕組み作りを目指す概念)の勉強会、ヘルス・プロモーションについては、健康教育のワークショップ、公開講座の開催などがある。

サイエンスカフェという事業も行っている。これは2005年から2年間の間で36回続けており、自然科学を中心に科学を一般の人達と共に理解し、楽しもうという文字通りお茶を飲みながら気楽に科学を語る市民の会である。現在、サイエンスショップというワンランクアップした事業展開を始めている。

HCセンターでは、非常に沢山の団体と連携し事業を展開している。連携・協力というものを通して「ヒューマン・コミュニティ創成研究」という新しい領域を開発したいと考えている。「ヒューマン・コミュニティ創成研究」ということばは、大学が地域、行政、企業、市民と連携しつつ、専門家と非専門家の立場が異なる者が協働して市民社会の新たな形を開拓し、人間発達と市民社会の形成等を有機的に結合させた新研究領域を創成するという理念である。今、あらゆる近代社会が作り上げてきた垣根を取り除いたところに新しい研究領域が見えてくるのではないか。これが研究科全体の理念であり、またそれを中心的に実際に推進していくのがHCセンターの役割と考えている。

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活動の中で見えてきた課題であるが、外部団体は大学のお金をインセンティブとして求めてくることがあるが、大学への期待はそれにとどまらない。財政的支援以外のインセンティブというものを如何に充実させるかというのは重要な課題である。また、アクションリサーチでは専門的、学問的知識が不要と思われがちだが、全く逆であり、研究者、専門家としての知識、専門的力量の有無が厳しく問われるのである。また、大きな組織との連携が優先的におこなわれているが、小さなNPO、ボランティア団体と丁寧な繋がりを持つことやこれらの団体の人達と同じ活動をしていく場面をどれだけ持てるか、その場所や資金の確保等ハードな部分での環境整備も今後の連携のネットワーキングにおいての課題である。

現在、HCセンターは人間発達環境学研究科の拠点である。しかし、できればこのHCセンターが、ESDの取り組みに見られるように、他の学部と連携をするときの、陰の、縁の下の力持ち的な存在としての組織、センターになりたいと考えている。

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