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地域連携活動発表会

<現代GPと研究室の地域連携活動>
発表者:工学部教授 足立 裕司

「現代GPと研究室の地域連携活動」について発表する。現代GPとは、文部科学省が新しい補助金として、社会的要請の強い施策課題に対応したテーマ設定で、各大学の中で特に優れた教育プロジェクト(取組)を選定し、財政支援を行うものである。神戸大学では、「地域歴史遺産の活用を図る地域リーダーの養成」というテーマで、神戸大学の文学部、工学部を中心に、全学から様々な方に参加していただき、平成16年度から実施してきた。この現代GPは、今年が最終年度であり、評価の年になっている。

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本学の取組は、地域にはたくさんの歴史遺産があるが、これらを地域活性化のために注目し、消失の危機にある地域歴史遺産の保全活用を実践する地域リーダー養成プログラムを開発し、人材を養成する方法の確立を図っていくことを目的としている。地域歴史遺産とは、文学部が取り扱う文献資料や工学部の分野である建造物などが含まれる。具体的には、実践的教育プログラムということで、フィールド活動も含みながら、講義を諸分野を専門とする教員で分担しながら行ってきた。概説から始まり、美術・工芸、農業遺産、観光、美術館経営など様々な分野を包摂したテーマの講義を行った。
大学教育として考える上では、基礎知識の重要性を抜きにしては語れない。所属学部(原籍)、つまり文学部なら文学部の学生の素養を活かした上で、建築なら建築の分野で何が対象としてあるのかということを考えていくことによって、現代GPの学際的な教育プログラムが生きてくると考える。所属学部での教育をしっかりと行い、その素養を通じて地域を眺めてみる。そういう経験を大学生の間に是非やって欲しいというのが大きな目的である。そして、社会に出てから、この教育プログラムでの経験が色んな形で地域に目を向ける契機になればいいのではないかと考えている。そのためには、兵庫という旧五国が合わさった地域を包括する学、兵庫という地域の特色を、例えば、「兵庫県学」という形でまとめていく必要があると考えている。

一方、現在、神戸大学における研究環構想というものが、今後のこれからの取組の方向性を示している。神戸大学を横断する、各領域をつなぐような形での研究環構想が、工学研究科と他の自然科学系研究科の間で設置されることになっている。自然科学の大学院の研究環と人文社会科学の研究環が構想として結びつくなら、神戸大学内での研究環の構想というのが現実的な意味を持ってくると思われる。

建築学の分野では、既に兵庫県のヘリテージマネージャー制度やまちづくりという分野で活動をしている人がいる。地域に関する調査・研究から地域連携へと移っていく素地は十分できている。そこに神戸大学として、あるいは学際的な形のチームとして、地域連携という形を取っていくことができるとしたら、これはまた実りのある構想になるように思われる。2004年度には、現代GPプログラムの採択があり、生野町との地域連携協定の締結、生野サテライトの開設、兵庫県とのまちづくり促進の連携協力に関する協定というような形で、我々の研究室でも地域連携の萌芽が見えてきた。

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現在、研究室では、舞子の木下邸の修復事業、文化庁との連携による震災時の文化財保存対策、国交省の鉱石の道調査などを進めている。地域連携には産と住民と学とそれに国の支援というものが必要である。ただ、研究室ができることは、調査、研究、地域との関連としての歴史遺産の評価、設計行為として地域の歴史遺産の保存計画、修復、設計、管理、緊急対策ではないかと思われる。
現在、我々の研究と学生の教育とが主体的に運用される中で、これから地域連携をどう進めていけばいいのか、というようなことを考えているところである。

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