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地域連携活動発表会

<文学部地域連携センターの活動について>
発表者:文学部地域連携センター研究員・文学部講師 坂江 渉

神戸大学文学部地域連携センターは、県内各地の自治体・住民団体と連携し、地域の歴史遺産を活かしたまちづくりを支援する目的で、4年前に設立された。主な活動は大きく次の5つの分野に分けられる。すなわち1.毎年開催される地域連携協議会、2.自治体史編さんや地域博物館の形成事業、3.災害時の歴史資料の保全・修復事業、4.阪神・淡路大震災資料の保存・活用に関する研究会、5.学生教育・人材育成事業、つまり、歴史文化の担い手をどのように育てていくかの5分野である。
今年度の事業の特徴は、県内の各自治体や住民組織と結んだ展示会を8件主催、あるいは開催協力したことである。この展示会を例にあげながら、今年度の活動報告を行う。

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一つ目として、小野市の「地域展」への協力がある。昨2005年1月、神戸大学と小野市が包括協定を結び、文学部地域連携センターの「地域展」への参加がはじまった。2005年の展示会テーマは、「青野原俘虜収容所の世界」であった。これは第1次世界大戦中のドイツとオーストリアの捕虜収容所に関するもので、関連資料の展示とともに、神戸大学発達科学部や文学部の教員や神戸大学の交響楽団の有志が協力し、捕虜たちが1919年に開催した音楽会を再現した。これらを、2006年には神戸大学でも、同様の企画で資料展、音楽会を開催した。大学での開催では文学部の西洋史、東洋史専修の学生、院生がこの準備に当たった。展示品の搬出・搬入、展示品の配置、図録の作成、史料翻訳なども自分たちの力で行った。小野市とは、これ以外に、2005年以来、小学生たちの地域歴史調査に、文学部の学芸員の資格取得を目指す実習生が参加し、地域博物館の新しい運営方法を学び取る経験を積んでいる。

次に今年は地域連携センター独自に、学生自らが直接企画した展示会が2例あった。まず、兵庫県公館県政資料館と連携して主催した「宍粟郡役所文書の世界」展は、奥村弘ゼミの学生が約一年間の準備過程を経て組み立てたものである。さらに尼崎市の90周年市制記念の歴史展に、市沢哲ゼミの学生が中世史のコーナーの一画を担当した。

最後に地元灘区と連携したものとして、「篠原の昔と今」展を、2006年3~4月にかけて開催した。既に2年前から灘区と神戸大学の間では、包括協定を結んでおり、その一環として、灘区まちづくりチャレンジ助成事業が公募されている。それに地域連携センターが応募する形で、地元で展示会を開催した。さらに今年度はセンターが直接、企画・製作するという形で、神戸大学百年記念館展示ホールでも資料展を開催した。これらの展示を行うとき、文学部地域連携センターは、常々「地域博物館づくり」ということを提唱し、地域の人たちとの接点重んじ、工夫を重ねている。

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最後に今年度の連携事業から見えてきたものは、次の2点である。1つは、「展示」という歴史叙述の機会が、人材育成に果たす役割の大きさである。学生を含め、担い手の育成や、住民の創造力の形成につながる。2つ目は見る側にとっても、展示づくりというものは、まちづくりや地域活性化にも一定の効果をもつことである。ただし、地域住民との接点を意識することを忘れてはならない。

 それらを踏まえて、神戸大学独自の大学ミュージアム、総合博物館を持って、地域と結びついた形で博物館を運営できる設備ができれば、なお一層総合大学に相応しい、より豊かな地域連携事業も可能になるのではないかと考えるに至った。
また、これらの事業を推進していくためには、大学が地域の問題に責任を持てるだけの安定的な資金の確保が、最終的には必要になってくるのではないかと考える。以上で、文学部地域連携センターの報告とする。

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